「プロテイン」とは「タンパク質」の英語表記です。プロテインの語源は、「最も重要なもの」を意味する古代ギリシャの言葉、「プロテイオス」。その言葉通り、筋肉はもちろん、内臓、骨、血液、髪の毛、皮膚、爪に至るまで、人間の身体のほとんどはタンパク質でできています。
また、その筋肉や臓器がきちんと働くためにはさまざまな酵素やホルモン等の助けが必要ですが、
それらの主成分もタンパク質。つまり、私たちの身体の最も基本となる成分であり、健康な身体づくりには欠かせないものだと言えます。もしも必要な量を適切に摂取できなければ、身体のさまざまな
部分がうまく働かなくなってしまいます。だからこそ「タンパク質=プロテインが人間にとって最も
重要な栄養素」だと、人々は古代ギリシアの昔から認識していたのです。
身体に不可欠な栄養素・プロテインを賢く摂取して健やかな身体を作り、生活の質を高く維持して
いきたいですね。
- それでは、1日にどのくらいのタンパク質を摂るのが
適切なのでしょう。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」には、タンパク質の推奨摂取量は、成人男性:1日60g、成人女性:50gと記載されています。ただし、この数値はあくまでも、特にスポーツをしていない一般的な人を対象としています。
IOCから発表されているアスリートの栄養摂取に関するコンセンサスの中では、筋力・瞬発力系種目の
アスリートは体重1sにつき1.7〜1.8g、持久系種目のアスリートは1.2〜1.4g程度のタンパク質摂取が目安になると記載されています。※1) - 体内のタンパク質は日々作り替えられています。体内で古くなったタンパク質は排泄され、食事として摂った
タンパク質を利用して新しいタンパク質を作り出して
います。もしタンパク質の摂取不足が続くと新しく作り替えることができず、筋力などが衰えるだけでなく、
身体の機能低下を引き起こして貧血や免疫低下、むくみなどの異常が現れ体調を崩しやすくなります。
また子どもでは成長障害、高齢者では
フレイル(虚弱)、サルコベニア(筋肉量の減弱)、ロコモティブシンドローム(運動機能の低下)などの老化症状が発生しやすくなります。 - 例えばタンパク質10gを摂取するには、肉や魚なら35〜50g、牛乳なら300ml以上、卵なら2個食べる必要があります。これだけの量の食物を食べると、メニューによっては余分な脂質やカロリーまで摂取してしまうことになってしまいます。
まずはタンパク質を多く含む肉・魚・卵・豆(豆腐・
納豆)を朝・昼・夜に分けて積極的に摂り、それ以外に牛乳・乳製品を少なくとも1日に1回は食べるように
心がけましょう。その上で、1日に足りない量を
プロテインで補うのが効率的でしょう。 - 筋肉をつけたり、筋力を高めたりしたいときには
筋肉トレーニングを行いますね。トレーニングをすると筋肉は損傷してしまいます。その傷ついた部分を
修復しながら、筋肉はより頑丈に強化されていきます。
その際に、筋肉の修復材料となるのがタンパク質。
もし筋肉の材料となるタンパク質が足りなければ、
トレーニングをしても筋力は強化されません。筋トレとタンパク質補給は車の両輪ですが、日々の一般的な食事だけでは不足になりがち。筋トレの効果を最大限に
引き出したいのであれば、十分なタンパク質の補給を
意識してくださいね。
タンパク質は動物性タンパク質と植物性タンパク質の2種類に分かれており、
それぞれに少し違いがあります。
- 魚介類、豚肉、鶏肉など、動物から取れる
食材に含まれているタンパク質のこと。
動物の身にも多く含まれていますが、
卵や乳製品といった副産物にも多く
含有されています。 - 植物由来のタンパク質のこと。小麦や大豆、野菜などに含まれているタンパク質です。
動物性タンパク質に比べて、体内の吸収率がやや劣るため、同じ割合で摂取しようと
すると少し量を増やさなければなりません。
同様にプロテインも、構成タンパク質成分によって、大きく3種類に分けられます。
- 牛乳に含まれるタンパク質の一種です。ヨーグルトの上澄みに
できる液体のことをホエイ(乳清)といいますが、このホエイに
含まれるタンパク質がホエイプロテイン。他にミネラルや
水溶性ビタミンが含まれ、高タンパク質・低脂肪で、身体への吸収が早いのが特徴です。 - ホエイプロテインと同じく牛乳を主成分とするのが
カゼインプロテインです。カゼインは生乳を構成するタンパク質の約80%を占めています。ホエイプロテインが水溶性で吸収が
早いことに対し、カゼインプロテインは不溶性で固まりやすく、
体への吸収速度がゆっくりであることが特徴です。 - ソイプロテインの原料は、その名の通り大豆(ソイ)。
植物性タンパク質であるソイプロテインは、他のプロテインと
比較してカロリーが控えめです。
タンパク質は一度に大量摂取しても体内で有効に使われません。筋肉を発達させるには、3度の食事と合間のプロテイン摂取を組み合わせて、1日に必要な量を5〜6回に分けて栄養補給することがベストとされているのです。そのうえ、プロテインはその主成分により、効果の出る摂取タイミングが異なります。それでは一日のいつ、どんなプロテインを摂取するのが身体づくりに効率的なのでしょう?
- 前日の夕食からかなりの時間が経っていますから、寝ている間にすべて
吸収されてしまい、目覚めた時の人の身体はタンパク質をはじめとする
栄養素が不足している状態です。朝にプロテインを摂取すれば、効果的に身体に吸収されやすいのです。 -
吸収スピードが速いホエイプロテインがおススメ。体内に
取り入れてから最速1時間で消化・吸収されるため、スピーディに
筋肉へタンパク質を届けられます。 - 運動2時間後に比べ、運動直後の方が筋タンパク質の合成が効率的であるというデータもあり、運動直後は筋肉が栄養素を大量に取り込もうとする「ゴールデンタイム」と呼ばれています。※2)ここで十分なタンパク質を補給しておかないと、筋肉を分解してエネルギーに変えて吸収して
しまい、せっかくのトレーニングの効果がなくなってしまいます。 -
トレーニング直後のゴールデンタイム内に素早く筋肉に栄養を補給
するためには、吸収スピードの早いホエイプロテインがベストです。 - 人間の身体は寝ている間に、筋肉の成長を促す成長ホルモンを分泌して
います。その時間帯にタンパク質が不足しないように、就寝前に
プロテインを摂取することで、効果的な筋肥大を期待できるでしょう。
ただし寝る直前に摂取すると胃へ負担がかかる場合があります。
少なくとも就寝する30分〜1時間前迄に、少なめの量を採るのがベスト。 -
眠っている身体にタンパク質をゆっくりと供給してくれる、
カゼインプロテインやソイプロテインがおススメです。
ダイエットのため食事制限をすると、筋肉の材料であるタンパク質の摂取量も減り、今付いている筋肉も徐々に細く少なくなってきます。筋肉量が減ると基礎代謝量も下がり、結果、太りやすい体質になる…という悪循環に。
ダイエットをする際に一番重要なのは、たとえ食事を
減らしてもタンパク質は毎日しっかり補給するということ。高タンパク・低カロリーを意識しながらバランスの
良い食生活を心がけることで筋肉量や代謝をキープ
すれば、健康的なダイエットが可能になります。
特に女性には、大豆食品がおススメ。アミノ酸スコアの
高い良質なタンパク質が含まれているだけでなく、糖質の吸収が穏やかで血糖値が上がりにくい、満腹感が持続するなどのメリットがあります。さらに女性ホルモンと似た
働きをするイソフラボンを含むので、美容のためにも
嬉しい効果が期待できます。
※1) https://www.sportsoracle.com/downloads/721/Athletes-Booklet.pdf
※2) K.Okamura et al. Am.J.Physiol.272: E1023-1030, 1997