研究も進み、数多くの試作品の中から、糖質濃度の薄いタイプと濃いタイプの2つに絞り込まれていました。この2つのうち、研究員たちがおいしいと思ったのが濃いタイプ。薄いタイプは「物足りない」「健康飲料でも、この甘さでは満足できないのでは」とみんなの意見は一致。でも、技術部長だけは納得していないのでした。
数日後、技術部長は研究員たちを連れて山に登りました。山頂に到着するとリュックから2本の水筒を取り出し、「これはこの前、研究室で飲んだ試作品なんだけど、どっちがおいしいと思う?」と研究員たちに試飲をさせました。「薄いほうが飲みやすい」「濃いのは甘すぎる」「薄いほうがゴクゴク飲めて、滑らかにのどを通る」つまり、全員が薄いタイプをおいしいと感じたのです。「でも、なぜ?」不思議がる研究員たちに技術部長はその理由を教えました。「汗をかいた時は、糖質量が少ない方がさっぱりしておいしいと感じるんだよ。開発してるのは『汗の飲料』。だから、汗をかいた時においしいと感じることが大事なんだ」その言葉にみんな深くうなずくのでした。
ところが、その試作品を初めて飲んだ社員たちは、「はっきり言ってまずい」「これじゃあ売れない」と大反対。それでも、社長は「汗をかいた後に飲めば、きっと理解してもらえるはず」と自分の味覚と直感を信じて発売を決断したのでした。
ところが、その試作品を初めて飲んだ社員たちは、「はっきり言ってまずい」「これじゃあ売れない」と大反対。それでも、社長は「汗をかいた後に飲めば、きっと理解してもらえるはず」と自分の味覚と直感を信じて発売を決断したのでした。
営業マンや社員を総動員して販売店を回りました。しかし、「こんな味で本当に売れるのか」と、なかなか商品を置いてもらえません。そこで、イベント会場でお客様に直接販売してみても、「味が薄い」「これでお金を取るの?」と不満の声が続出。中には、「こんなもの飲ませてふざけるな!」と飲みかけを営業マンにかける客も。「どうすれば売れるのか」「やっぱり味が悪いのか」営業マンたちは途方に暮れてしまいました。
そこで、「サンプリング無制限!」という大きな賭けに出たのです。飲んでもらって説明すれば、きっと理解してもらえる。今、大事なのは商品を売ることよりも、商品コンセプトを伝えることなんだ。そして、おいしいと感じてもらえる、あらゆる場所でサンプリングを開始。ある営業マンは野球場に出向き野球少年へ。また、ある営業マンはサウナの脱衣所で待ち、汗をかいた人に。町中では買い物袋を抱えて汗をかく主婦にも。もちろん商品の説明は忘れないで。配布本数は初年度だけで、なんと3000万本。その頃にはたくさんの人に「おいしい」と認められるまでに。それでも、その後も地道にサンプリングを続けたのでした。
これらの努力が結実したのは、発売から2年目の夏。ついに爆発的なヒットとなったのです。そして、誕生から40年以上。今では世界20カ国・地域以上※で愛されるロングセラー商品となったのです。
※2022年現在